第一印象からチョー無愛想
これは、当時28歳の私が初めて現場所長を務めた現場で出会った、とんでもない発注者の話だ。
現場が落札され、上司と一緒に担当者へ挨拶に向かった日のこと。市役所に着くと担当部署の課長と担当者が出迎えてくれた。名刺交換を終え、少し現場の打合せを行ったのだが、その時にある違和感を覚えた。
先方の態度がどうも私に対してだけオカシイ。
上司に対しては、相槌をしながら愛想よく話しているのだが、私が話し出すと態度が一変。相槌はなし、黙って資料を見つめるだけ。異様な雰囲気のまま、挨拶訪問は終了した。
工事が始まり、さらに関係が悪化
工事が始まると、私への態度がさらに酷くなった。
まず、現場の立会の電話をした時には、「忙しいのでまた予定を見て折り返す」と言われ、連絡が2~3日途絶え、再度私から連絡をすると、ものすごく嫌そうに「明日行きますので」と一言で電話を切られる始末。
別の日には、予定があって現場に入るのが少し遅くなっただけで、「もっと早く現場にいってくれないと私たちも業務がありますので」と嫌味を言われることもあった。
心の中ではかなり怒りが募っていたが、会社の立場上、我慢して工事を進めていった。
許せない事件が発生
そんなある日、現場で図面との不一致が発生し、発注者の確認をしなければ工事が進まないという事態に陥った。嫌々ながら発注者に連絡を取り、現場を確認してほしいという思いと、指示が欲しいという連絡をした。
すると、「協議書は作っていますか?順番が逆ではないですかね?」と言われた。「協議書は作成しますが、私も経験が浅いので、まず現地で打ち合わせをして協議する内容を相談したいです」と返答した。
結局、不機嫌そうに電話を切られ、1時間後に発注者が現場に到着。
私を見るなり、「こんなことも分からないんですか?」と捨て台詞を吐かれ、それまで我慢していた私も限界に達し、こんな強気な反論をしてしまった。
「お言葉ですが、以前から私は○○さんの態度に違和感を感じています。経験が浅い私に至らない点があるのは分かっていますが、現場での打ち合わせも業務ではないんですか?私が気に入らないのであれば、上司に直談判してもらって現場代理人を変更させましょうか?」
まさか反論されるとは思っていなかったようで、担当者は呆気に取られ、その場で立ち尽くしていた。
そこから手のひらを返し、「打合せを行いましょう」と明るく言われ、私は悔しくて腹が立ったが、言いたいことが言えてスッキリしていたので、グッと気持ちを抑えた。
発注者はお客様だが…
土木の現場で言えば、発注者は確かにお客様だ。しかし、建築現場のように民間の施主がいるのとは違って、基本的には公共のものを共に作り上げ、管理するという考え方のはずだ。
協力して工事を進めなければ、絶対に良いものはできない。
今回の件は、稀なケースだと思う(稀なケースであってほしい)が、そもそも発注者との信頼関係が破綻している場合は、現場が始まる前にきちんと話し合いをしておくべきだったと反省している。
気になることがあれば、言いづらいことであっても面と向かって言う、聞くことが大切だ。現場を一個人の機嫌だけで振り回すことは絶対にしてはならないと、私は思う。
おかしいことは、おかしい
“年齢が若い”というだけで、私と同じように理不尽な態度をとられたことがある人もいるのではないだろうか。
今回に限らず、こんな理不尽なことがあったと上司に報告した際、「君の態度にも問題があるのでは?」と言われたこともある。
しかし、自分がいくら低姿勢で相手のことを考えながら行動していたとしても、理不尽な態度や強気な態度をしてくる人はたくさんいる。
その時、我慢をしなければならないのは、何も悪くない私たちなのだろうか?
そんなことはないと思う。年齢が若くても、経験が浅くても、現場の役に立とうと必死に努力している人間はたくさんいる。
何も悪くない人間が我慢する必要はない。「おかしいことはおかしい」と、声を上げる勇気も時には必要だ。