なかなか進まない残業規制
先日、日経コンストラクションを読んでいた際、あるデータが目に留まった。日本建設業連合会(日建連)が2022年9月に公表したもので、そのデータによると、残業規制はまだまだ進んでいないことがわかる。
大手企業の中には、2022年から適用を始めている会社もあり、残業規制を進めているように見えなくもない。しかし、日建連が発表したデータからは、非管理職の約6割が上限規制を超過して働いていたことが明らかになった。
この調査は、日建連に加盟している会社のみのデータであり、実態はもっと多いのではないかと考えている。日建連に加盟していない中小建設会社はたくさんあり、その会社の人々からすると、残業規制はまだ「他人事」なのかもしれない。
しかし、2024年4月からは、会社が大きかろうが小さかろうが関係なく、すべての会社に残業規制が適用される。「ウチは大丈夫」なんて言っていたら、指摘を喰らってしまった…なんてことが頻発するかもしれない。
そうなると、最悪の場合、会社が倒産するケースも考えられる。また、発注者から指名停止を受け、新卒・中途の求職者からそっぽを向かれてしまい誰も会社に入ってくれない…なんてことも想像できる。
まだ何も対策していない企業は、本当にこのままで良いのだろうか。
残業していないように見せかけて、実は…
私自身もかつて経験したことがあるが、残業していないように見せかけて実は残業している、もしくは、上司がサービス残業をさせているというケースがまだまだあるのではないかと思う。
表向きは、「残業していないよ!月45時間以内に収まってるよ!」と外部には申告しつつも、裏では「もっとやっておけよ!まだ20時じゃねーか!夜はまだまだあるんだぞ!」と部下に言っている上司もいるのではないだろうか。
もっとも、今書いたことは私が知り合いから聞いた話であり、これは氷山の一角だと思っている。
特に、テレワークが普及した今日では、勤務表は残業時間を短く記入しておいて、実は日付が変わっても仕事をしている、という人も少なくないように思う。
勤務表の改ざんは昔からあったが、今はどんどん闇の奥深くに入り込んで、なかなか表向きになっていない(できていない)ような気がしている。
もちろん、前向きに取り組んでいる会社もある。働き方改革の一環として、勤務表改ざん改革・残業隠し改革を進めている会社や個人もあるだろう。
皆さんのところはどうだろうか。残業規制を進めているように見せかけて、実は隠している、なんてことはないだろうか。
労基署の臨検で聞かれた”まさかの質問”
以前勤務していた現場で、労働基準監督署の臨検が入ったことがあった。もちろん抜き打ちで、監督官が突然現場事務所を訪問し、検査が行われた。
これまでと同じく、安全体制の確認や書類整備状況の確認、現場状況の確認等が行われた。これで終わりかなと思った矢先、「残業時間はどうなっていますか?勤務表の入力状況はどうですか?」と質問された。
これまで聞かれたことがなかった内容だったので、現場職員一同驚いた記憶がある。この質問を受けて、「今後、労基署は臨検時に労働時間がどうなっているか?を見ていくぞ」というメッセージをひしひしと感じた出来事だった。
今はまだ猶予期間なので、お咎めを受けることはない(行き過ぎたことをやればお咎めを受ける)が、2024年4月からは待ったなしだ。