“十現場十色?” 何が起こるかわからない。だから現場は面白い!(施工の神様より)

土留め工で面白い場面に遭遇

今、私は某道路の工事現場で工務兼CADオペレーターとして勤務している。大きな現場で工種がとにかく多い。道路工事のほぼすべての技術が見れるんじゃないの?と思って、この現場に赴任した。

その現場でさっそく面白い場面と遭遇した。土留め工のグラウンドアンカーで、注入材が地中に逸走してしまうという事象があったのだ。コンサル勤務時代には想定していなかったことで、とても興味深く推移を見ることができた。

どうやら、そのグラウンドアンカーの打設位置付近には、大きな亀裂が地中に存在していたようだ。注入材を流し込んでいたところ、通常は孔口からあふれ出てくるはずが、設計量以上になってもあふれ出てこず、注入材が充填されているかどうかを確認できなかったのだ。

この事象から、地中に大きな亀裂が多数存在し、そこに注入材が逸走しているのではないか、と考えた。そこで対策案として考えたのは、①ゲル状の注入材の使用、②フリクションパッカーの採用の2案だった。

結論、採用したのは②のフリクションパッカーだった。①のゲル状の注入材の使用も試験施工として試してみた。ゲル状であれば、亀裂に逸走することがなくなるのではないかと考えられたが、結果は、ゲル状の注入材も亀裂内に逸走することとなった。

この事象から、想定している以上に亀裂が大きいと考えられた。そこで、②のフリクションパッカーを使用することになったのだ。

フリクションパッカーはアンカー定着部を覆い、注入材が逸走しないようにするものである。フリクションパッカーの材料には小さな隙間があり、注入材がパッカーから染み出すことで周辺地山との摩擦を期待する。そうすることで地山に定着させるのだ。

地盤改良でも面白い事象に遭遇

さらに地盤改良でも面白い事象を見ることができた。基礎地盤を改良するのではなく、土留め壁背面の止水工としての地盤改良を施工する必要が生じたのである。

高圧噴射攪拌工法である、ジェットグラウトによる地盤改良のうち、高速・大口径・改良範囲を半円にできる工法が採用された。これにより、排泥量を少なくすることができ、よりスピーディーに、かつ安価に施工ができると考えたからだ。

この事象では、地盤を改良する目的ではなく、止水効果を狙ったものである。つまり、土留め背面に止水壁を構築することが目的であり、必要な範囲を改良して止水効果を期待するものだ。

現場では”想定外のこと”が次々と起こる

現場を進めていくには、設計通り工事をすることが前提だが、すべてが設計通りいくわけではない。現場の状況に応じて、設計変更を行いつつ、工事を進めていくことが必要だ。

設計時には想定していなかったことが、現場では次々と起こりうる。グラウンドアンカーの注入材の逸走もその一つだろう。

実際、建設コンサルタント勤務時に設計していたとき、グラウンドアンカーの注入材が地中に逸走するなどとは思いもしなかった。設計時にも想定していなかったので、申し送り事項に記載することもなかった。

法面工の専門家に聞いてみたところ、注入材の逸走は珍しい事象ではないそうだ。こういった事象も含めて、現場でないとわからないことは多い。現場ではいろいろなことが見れる。これだから、現場の仕事は面白い!

 

施工の神様

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