何もできない若手現場監督
最近、私はある現場の応援に行った。そこには、40代の現場所長と、20代前半の若手現場監督が2人、手元として配属されていた。
現場に着くやいなや、現場事務所の雰囲気が非常に暗いと感じた。誰かが何か話すわけでもなく、お通夜のような雰囲気の中、それぞれがパソコンを見つめていた。
現場に出ていき、近くに立っていた若手現場監督に声をかけた。
「基礎砕石を敷き均し終わっているから、写真を撮らなくていいの?」と聞くと、信じられない言葉が返ってきた。
「写真ですか?どうやって撮るんですか?」
私は驚いた…。配属されて1年は経つ社員だったからだ。
しかし、その時は、たまたま何らかの理由で写真管理はやらしてもらえていないのだろうと考え、嫌な予感はしたものの他の質問もしてみた。
「いつもどんな業務をしているの?」と聞くと、「いつもですか?KYや安全日誌を書いてファイリングしています」と答えが返ってきた。
1年経って業務内容がそれだけ…!?非常に疑問に思ったので、続けて質問をぶつけてみた。
「所長からの指示はないのか?」
すると、驚くべき答えが返ってきた。
怒鳴り散らす上司の存在
彼らは、入社して右も左も分からない時に今の現場に配属され、配属されてから毎日、所長に現場でこっぴどく怒鳴られ続けたのだという。
怒鳴られた理由もひどいものだった。
初めて光波を据える際に、据え方の説明もほとんどされずに「据えてみろ」と言われ、時間がかかりすぎて激怒されたそうだ。
初めのうちは分からないことを質問していたのだが、次第に、質問するたびに「そんなことも分からないなら現場に来るな」など散々なことを言われ、質問するのが怖くなってしまったとのことだった。
その話を聞いたとき、建設業界の闇を感じた。
怒鳴ることしかできない上司こそ現場に来るな
今の時代、怒鳴れば人が言うことを聞く、なんて時代ではない。
時代が変わり、選択の自由が増え、ブラックな環境に人が集まらない状況になっている中で、パワハラのような怒鳴るといった行為は言語道断である。ましてや、恐怖でしか人を支配できない人間に、現場所長が務まるとも思えない。
案の定、その現場の所長は下請けからの評判も非常に悪く、発注者からの信頼も非常に低かった。
現場の状況はと言えば、当の本人は現場にも出ない、まともに教育もしていないことから、写真の撮り忘れや図面と違う施工箇所がチラホラと、さんざんな状況であった。
なんて情けない現場所長なんだ…と、私は唖然とした。
会社全体で新人を教育していくことが大切
この現場での1番の問題は、現場にいる若手の教育が遅れてしまっていることだと思う。
1年という時間は、現場監督にとって非常に貴重な時間だ。その時間を、ほとんど教育も受けず、古臭い「現場で見て覚えろ精神」で過ごさせるのは馬鹿げている。
ましてや、今はICTや建設管理システムなど、次々と開発されている。そういったツールを若手が覚えて使いこなすことで、自分たちに足りない経験値をカバーし、施工管理を進める時代が来ているのだ。
この現場の所長はそれを理解できていない。さらに、怒鳴るというのは、コミュニケーション能力が低いからだと思う。自分の思ったことを簡潔に、相手にわかりやすく伝えることができないため、感情的になるのだ。
そういった人間は、発注者や建設知識がない近隣住民に対しても、自分勝手に専門用語を並べて話をしてしまうことが多い。教育が下手な人間は、現場所長としてどうなのかとも個人的に思ってしまう。
――私は、教育を誰か個人に押し付けるのではなく、会社全体で新人を教育していくことが大切だと考える。
月に1回でも良いので、会社の重役が現場を視察し、現場で働く若手の様子や成長を把握したほうが良い。そこで、極端に若手の成長が遅い現場は、人間関係など何かしらの問題がある可能性が非常に高い。
まともに教育ができない人間がいる現場に、若手を配属させておく必要はない。そういった現場の現状を知るためにも、現場視察や会社全体での新人フォローが必要だと思う。
最後になるが、怒鳴ることしかできない所長は現場に必要ない。