【建設業の中枢問題】関東地方整備局、東京建設業協会、東京都の意見交換会

東京建設業協会、関東地整、東京都の意見交換会

9月19日、国土交通省関東地方整備局、東京都、東京建設業協会の3者は、東京・千代田区の都道府県会館で意見交換会を開催した。

主要テーマは、週休2日工事の推進、生産性の向上など。

この意見交換会をもとに、東京建設業協会の動向と、東京建設業協会が発注者側に要請した内容をレポートする。

発注者と受注者トップの挨拶

意見交換会の冒頭では、発注者と受注者のトップが挨拶するのが習わしだ。この挨拶の中身に、現在の建設業界の課題が詰まっているとも言える。

ということで、まずは石原康弘氏(関東地方整備局長)、三浦隆氏(東京都建設局道路監)、飯塚恒生氏(東京建設業協会会長)の挨拶を簡単に紹介する。

石原康弘関東地方整備局長の挨拶

石原康弘 関東地方整備局長

「建設業は地域のインフラ整備、維持管理の担い手である。また、地域経済の雇用や国民生活を支え、災害時には最前線で安全を守る地域の守り手の役割を果たしている。建設業が持続的にこの役割を果たしていくためには、働き方改革に基づく週休2日制の確保、生産性向上を図り、担い手の確保・育成に努めなければならない。

国交省は改正品確法の理念に基づき、分離・分割発注の実施、ダンピング受注防止、設計労務単価の引き上げの取り組み、施工時期の平準化、i-Constructionを実施している。関東地方整備局でも週休2日制のモデル工事の対象範囲を拡大し、長時間労働の是正に取り組んでいきたい。」

三浦隆 東京都建設局道路監の挨拶

三浦隆 東京都建設局道路監

「東京都建設局は、2020年の東京五輪やその先に向け、魅力的な東京をつくっていく。ただ、それを支える建設業に就職する人は少なく、また技術者が高齢化しており、次世代への技術継承が困難な状況である。

そこで東京都建設局では、若者や女性が建設業に入職しやすい環境づくりに邁進している。今年度から「週休2日制確保試行工事」はすべての土木工事を対象とした。見学会は小中学生、高校生、大学生を対象とする「建設業の魅力発信モデル工事」を試行し、「女性活躍モデル工事」「快適トイレの配置」も実施している。担い手三法の理念はもとより、適切な工事平準化にも取り組んでいる。」

飯塚恒生 東京建設業協会会長の挨拶

飯塚恒生 東京建設業協会会長

「東京の安全・安心を支えるという建設業の社会的使命を、改めて強く意識している。建設業界では今後10年間で高齢者の大量離職が見込まれ、担い手確保が最大の課題となっている。また、働き方改革関連法の成立により、長時間労働の是正や週休2日の実現になどに向けた取組みが急務である。

業界全体で対応し、若者に将来を託せる魅力的な建設業の実現を目指し、関東地方整備局、東京都と連携しながら、求められる役割を着実に果たしていきたい。」

東京建設業協会の活動内容「働き方改革の促進」

上記3者の挨拶をみても、行政・発注者・業界ともに「働き方改革」「生産性向上」「担い手確保・育成」の3点を強く意識しており、建設業界の改革を進めることで意見は一致している。

では次に、意見交換会で報告された東京建設業協会の活動内容と、同会が意見交換会で発注者に求めた改善点について箇条書きする。

1.週休2日、長時間労働改善等の促進

・長時間労働の是正をはじめとした働き方改革が急務となるため、東京建設業協会の会員企業における現場の休日数や時間外労働の実態を調査し、処遇や長時間労働を改善していく。また、働き方改革の促進に向けて、国や都に改善要望を実施し、行政等の理解・協力を求める。

・関東地方整備局は、東京建設業協会などの要望などを受けて、今年度から週休2日制モデル工事を見直し、下記6つのポイントを実施していた。

  1. 発注者指定方式を開始
  2. 工期の制約を緩和し、週休2日モデル工事の対象を拡大
  3. 取組証を4週8休以上達成で発行
  4. 悪天候等により、工期変更が必要となる場合の協議を簡素化する試行を開始
  5. 労務費・機械経費の補正を導入するほか、間接工事費の補正を見直す
  6. 4週8休以上の現場閉所を実施の場合、成績評定で加点評価

そこで今回、東京建設業協会は週休2日工事の推進について、関東地方整備局に対して新たに4点を提案した。

  1. 実態等を踏まえた工期設定のさらなる改善
  2. 工事工程表の詳細開示
  3. 施工条件の詳細開示
  4. 週休2日の実施に伴う必要経費の補正係数の引き上げ

2.働き方改革関連の情報提供

・働き方改革関連法に関する説明会を会員企業向けに開催するほか、働き方改革の促進に向けた情報提供、「働き方セミナー」を開催していく。

東京建設業協会の活動内容「生産性向上の支援」

3.i-Constructionの促進

・ICT建機やドローンの活用など i-Constructionの普及促進、プレキャストコンクリートの利用など、建設現場の生産性向上を図る。そのためにICT建機の体験やプレキャストコンクリート工場見学など、 i-Construction見学会を実施する。また、国の営繕工事で推進している生産性向上施策に関する説明会も開催する。

・関東地方整備局は東京建設業協会などの要望を受けて、今年2月公告工事からICT施工工事の活用について小規模土工等の実態を踏まえ、ICT建機の利用割合を現場に応じて設定できる積算に改善。また、小規模土工への適用拡大のため、出来高管理要領に普及が進んでいるTS、RIK-GNSS等の測量技術を追加した。

これについて東京建設業協会は、ICT建機を活用した場合の「費用負担の見直し」を関東地方整備局に求めた。関東地方整備局は実態調査を行ないつつ、意見を本省に伝えると回答した。

4.ICT活用情報の提供

・建設現場でスマートデバイス、ロボット、AIなどの導入活用が拡大する中、建設ICT活用セミナーの開催、東京建設業協会が運営している「建設ITホームページ」の更新等を通じて、その活用事例を広く紹介していく。

東京建設業協会の活動内容「建設産業の担い手の確保・育成・定着」

5.新規就業者の確保の支援

・建築土木系学生を対象に「みんなの建設業☆業界研究フェスタ」を開催するほか、東京建設業協会が運営している就職応援サイト「みんなの建設業就活ナビ」を充実させることで、優秀な人材の採用を目指す企業を支援する。

・学生に向けて建設業の魅力ややりがいをPRするため、業界案内パンフレット「(仮称)建設就職読本」を12月上旬に作成し広く配布する。

6.若年社員育成・定着の支援

・建設業を支える人材の育成・定着を支援するために各種セミナーを開催する。また、若年技術者の1級・2級施工管理技術士(土木・建築)の資格取得を支援する。

7.女性活躍の促進

・女性技術者の採用と活用を促進するため、建設系女子学生等を対象に現場見学会や女性技術者との情報交流の機会を設ける。また、建設現場に従事する女性技術者の活躍ぶりを機関誌に掲載するほか、学生等へのPRを促進する。

8.建設系高校生の作品コンペ開催

・都内高校の建設系学科に学ぶ生徒の入職促進などを目的として、東京都都市整備局と共催で、作品コンペティションを開催。優秀作品の表彰を12月に開催する。

9.工事技術者の銘板設置

・かねてから東京建設業協会などは「工事技術者の銘板設置」を要望してきたが、関東地方整備局はこの工事技術者の名前を刻んだ土木構造物の銘板について拡充を発表、試行工事を実施中であると伝えた。

銘板に監理技術者の名前を明記し、やりがいアップを狙う

10.建設キャリアアップシステムの普及促進

・建設技能労働者の適切な評価・処遇改善の実現や現場管理の効率化を目的とし、来春運用が予定されている「建設キャリアアップシステム」の普及促進をはかり、建設業振興基金との契約に基づき、窓口業務を実施。

・建設キャリアシステムの加入促進については、自由討論の席上でインセンティブの要望もあったが、関東地方整備局は登録状況を鑑みた上で、インセンティブを検討するとの回答に留まった。

「“地域インフラ”サポートプラン関東2017」を評価

自由討論の席上では、東京建設業協会から関東地方整備局の取り組み「“地域インフラ”サポートプラン関東2017」を評価する声もあった。とりわけ、各社の週休2日への取り組みを紹介する「週休2日チャレンジサイト」の開設は、他社事例を参考できる有用な取組みとして、継続を望む意見があがった。

このほか、同プラン内の「工事関係書類スリム化ガイド」発行も東京建設業協会から好評だった。「工事書類の簡素化が必要な時代なので、必要な書類と不要な書類が明確になった」という声があった。

以上、東京建設業協会の活動内容と関東地方整備局とのやりとりを簡単にまとめたが、発注者と受注者の意見交換会は、双方が建設業界の問題点を整理する重要な場面である。受注者は改善を提案し、発注者はその提案について精査する。そして、具体的なカタチで改善のアクションを起こしていく。「働き方改革」「生産性向上」「人材の確保・育成・定着」という建設業界の中枢問題を、発注者と智恵を絞りつつ、いかに乗り越えていくか、今後の東京建設業協会の動向に注目したい。

 

施工神様

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