工期延伸に潜む「大きな落とし穴」
建築工事に比べ、土木工事は工期が延びることも珍しくない。
これを言うと、建築の人間は「工期が延びるなんて羨ましい」「土木工事はヌルいな」と言う人もいるが、その解釈は間違っている。
土木工事の工期延伸には、「大きな落とし穴」が潜んでいるのだ…。
気を付けろ!工期延伸は赤字の危険性大
大前提として、工期の延伸は赤字になる可能性が非常に高い。
工期が延びると当然、その分だけ現場でお金がかかる。工期が延びた場合、お金が出れば問題ないのだが、基本的に数量計算に載っていない名目についてのお金は発生しないと思ったほうが良い。
私の上司の話だが、過去、工期が半年延伸したのにも関わらず、予算増額の金額が50万円程度しか上乗せされなかったことがあるそうだ。
1ヶ月現場が動けば、私の肌感覚で最低でも100万円は掛かる。人件費や、重機を使用した作業が必要であれば、もっと予算を見るべきだろう。半年の延伸に対して増額金額が50万円となると、相当な損失だったことが予想される。
工期延伸になって、工期に余裕ができたと大喜びしていては、非常に危険だということだ。
申請遅延等での工期延伸は絶対に避けろ!
工期延伸の原因として、関係機関に申請が必要な書類等の作成が遅れてしまい、1ヶ月近く工事が止まってしまった、という話もよく耳にする。
申請関係の遅れで工期延伸は、はっきり言うと論外である。延伸に伴う追加予算の申請すらできないからだ。
現場管理者が申請を怠ったことによる工期延伸に対して、追加予算が出るほど公共工事は甘くない。
こういった要因での工期延伸は、大赤字の危険性が非常に高い。申請で工期が延伸するようなことは絶対に避けよう。
元請けより、下請けのほうが負担を受けやすい
工期延伸の理由によって状況は異なるが、下請けが工期延伸の負担を非常に大きく受けやすい実情がある。元請けによっては、工期延伸の理由を下請けに責任転嫁してしまう悪徳業者すらいるそうだ。
仮に、下請けの責任で工期延伸になったとしても、基本的には元請けも費用負担をしなければならないのだが、工期延伸に対する発生費用を下請けが全額負担し、会社が倒産したという話まで聞いたことがある。
もちろん建設業法では、一方的に下請けに追加費用を負担させることは禁止されており、なおかつ下請けに責任がなければ、元請けがその費用を負担することになっている。
しかし、仕事を回してもらっているという立場上、下請けが費用負担をしているケースは結構ある話ではないだろうか。
弱い立場の業者が損害を被る可能性が高いということだ。
工期延伸は最後の手段として考えるべき
当たり前の話だが、工期延伸を避けるためには、事前の準備が必要だ。
まず、前提としてどのくらい延ばせば工期が間に合うのか、それに伴う費用をどこから、どのような理由づけで捻出するのかを考えるのが、私たち施工管理者の仕事である。
工事がどうやっても間に合わないと判断した場合、その理由、追加費用の項目等を一から洗い出し、追加分の予算を計画し、それを確実にもらうことが我々の仕事だ。
それができなければ、多くの業者や関係者が泣くことになるかもしれない。安易に工期を延ばすという選択肢を取るべきではない。
私が思うに、工期延伸は、本当に最後の手段として考えるべきである。