任せると、放置するは違う
後輩や部下に早く成長してもらいたいと考えたとき、わかりやすい方法として「仕事を任せる」というものがあります。任せることにより、相手の主体性や責任感を引っ張り出し助長して、自分で考え決めていくプロセスを体感してもらうのが良い方法ではあります。
とかく施工管理はリーダー職であり、自分で決めることや責任感はとても重要です。そのためには、多少大変な思いをしたとしても、ある程度の知識を付けた段階で、任せてみることで得られるものも多くあると考えます。
ただし、「任せる」という言葉の定義が、相手に全てをゆだねることであり、一切関与しないことだと考える人がいます。結果として、「放置する」ことになっている現状もあると感じます。それでは成長しません。
「放置する」とは、指示を与えた後、何のケアもしなければヒントも与えない状況で、ただ完成を待つ状態のことです。まるで宝くじの当選を待つようなもの。これだと上司側も部下側も、最初から最後までただ不安な状態で進めることになります。
不安に包まれた状況で、主体性や責任感だけを頼りに戦うことになるわけです。そうなると、当然とんでもない結論に導くことも少なくありません。途中段階は何のフォローもしてくれなかった上司が、最後に出した結果に対しめちゃくちゃ怒る。そんな構図が出来上がります。
これは単純に上司が楽をしただけの話。何もせずに終わるまで待ち、最後だけを見てあーだこーだ言えばいいだけなので簡単です。放置すりゃそらそうでなるでしょと言わざるを得ません。これがいわゆる、やりがいの搾取というやつです。
こうなると、最後の最後まで答えがわからない状況で仕事をすることになり、常にびくびくしながら働くことを覚えます。自由に仕事をするどころか、どうやったら怒られないかの「正解探し」が始まり、主体性も責任感も芽生えることはないのです。
部下に必要なのは、小さな成功体験を積むこと
では、「任せる」とはどういうことでしょうか。まずは仕事には計画、実施、結果の3段階があると理解しましょう。仕事は段取り八分と言われます。段取りとは、この場合でいうところの「計画」に当たります。
つまり、計画で成功するかどうかが決まり、実施はこなすだけ。その後に結果が表れるのです。まだ未熟な部下に仕事を任せる場合、基本的には「実施」を任せること。そう理解するのがわかりやすいでしょう。
つまり任せるとは、8割を占める計画段階ではしっかりとケアをし、実施については自由にやらせ、見守っていくことです。そして結果はどうなっても構いません。計画まで問題ないなら、復旧も2割で済むわけですよね。そのくらい上司が何とかしましょう。
部下に必要なのは小さな成功体験を積むことです。計画から狂ってしまい、絶対に失敗することがわかりながら実施させるのは、公開処刑に等しいのではないかと思います。自信を失うだけの行為だと考えます。
所詮実施は、計画のおさらいです。それでも、初めてやってみる部下にとっては大冒険。その経験は貴重なものとなって積み重なり、自信につながります。その自信により次へのチャレンジが生まれ、計画も一人でやってみたいと考えるようになるのです。これが主体性です。
計画は、つまり「考え方」。無限にある方法の中から、自分なりの答えを生み出すプロセスそのものです。だから難しく、だからいかようにも応用が利く。でも結果をイメージできないと、計画はできないのです。
だからまずは、実施を自力で経験させることから。そのイメージをもって計画ができるように成長を後押しすることが大切なのです。
ただすべてを任せることは、放置です。それでは部下は育たず、信頼関係もできません。「最後は俺が責任を取ってやる」と思わせるためにも、計画まではしっかりと承認し、ある程度の安心感の中で挑戦することが、部下育成なのです。