サブコンの被害者
これは以前、安全専任をしていたプラント現場での話だ。
ある日、作業員が「たった1日で現場をクビになる」という信じられない事件が発生した。
事件発生の背景
その現場のサブコンの人間は、現場詰所に来る時にはじめて、現場に送り込まれた作業員たちと対面することが多く、名前さえ分かっていないことがほとんどだった。
そのため、作業員たちの事前情報がないに等しく、まずは実際に作業をしてもらわないと、その人が何ができるのか判断がつかないということが多かった。
一次下請けのサブコンが、作業員たちの技量を全く把握していないのは問題ではないか?
そんな疑問を抱いていたある日、事件が起きた。
1日で現場をクビになった作業員
事の発端は、その作業員の健康状態や仕事の経験などを、私が所長に伝えたことだった。
瞬く間に所長からサブコントップに話が伝わり、あろうことか、「この人は無理だから辞めてもらおう!」と言いだしたのだ。
当たり前のことだが、その作業員は経歴も資格も一切偽っておらず、全部正直に書いてあった。
聞けば、これまで水道の配管工の仕事をゼネコンの下に入ってしていて、電気の仕事に関わったのは弱電関係の配線を短期間手伝っただけ。プラントの現場に入るのも初めてで、これからやる予定だったケーブルをラックに敷設する作業等は全く経験がなく、フルハーネスなども初めて身に付ける、と話していた。
さらに、年齢が64歳(当時)で、糖尿病と心臓疾患があり薬を飲んでいて、高い所での作業は止めたほうがいいと医者から言われていた。健康診断書に高所作業要注意と書かれており、本人もその通り事前に申告していた。
本来そこまで分かっていれば、会社としては、この現場に作業員を送り込むことは控える判断をするだろう。しかし、この現場に送り込まれたということは、サブコンの怠慢でしかない。
現場にどんな人を送り込むか、業者を探し交渉している人間がいるハズだが、その人間も人数だけ気にして、作業員の年齢や経歴などはほとんど気にせず、ただただ人を送り込め!と契約をまとめていたのだろう。
まったく…失礼な話だ!!!
ダメならダメと、最初から本人もしくは所属会社に伝えるべきで、サブコンは人の気持ちなどこれっぽっちも考えていないことを痛感した出来事となった。
そんな仕事をしていて楽しいのか
当然、この話は周りの作業員にもすぐに伝わった。皆何も言わなかったが、そんな扱いをしたサブコンには決して良い印象は持っていなかっただろう。
サブコンにはサブコンの言い分があるのかもしれない。私の知らないことが何かあるに違いない。だが、改善意識も何もなくただ仕事をこなしてるだけでは、物事が良い方向に進むはずもない。
そもそも、こんな風に仕事をしていては、満足感も達成感も感じられないのではないだろうか?
今回のことを反省し、原点に立ち返って、雇い入れる側もサブコンも考えるべきだろう。どんな小さなことでも、今の悪いところを1つでも改善していこう!とする気持ちを持ってもらいたいものだ。